【絵本】とある牡蠣の一生(仮)
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僕は牡蠣の人といつも一緒。
いつからどうして一緒なのかまったくおぼえていないのだけれど、気が付いたときにはいつも一緒。お正月も。。
豆まきも。。
たった1個しかなかった牡蠣の人のバレンタインのチョコを食べちゃったときにはすごく怒られた。あんなに怒んなくてもいいのにね。
僕はどうやら「牡蠣」という生き物らしい。たくさんの牡蠣をあけていたらたまたま僕がいたんだそうだ。そういえば熊本にもつれて行ってもらったんだよ。
パリにも!僕は牡蠣だから殻に閉じこもってしまえば、どこにでもついていけるんだ。
今度はアメリカにもつれていってくれるって。
そういえばひな祭りには女装もさせられたな。。僕は男の子でも女の子でもあるからだそうなのだけど、
やっぱりこっちのほうがよかったよ。
最近はね、牡蠣の人のお仕事のお手伝いもしてるんだ。毎日毎日、ぼくら牡蠣のことを調べて「カキペディア」っていう世界で一番大きい辞典をつくってる。
世界で一番の牡蠣をつくろうともしてる。。できちゃったらぼくはどうなるのかな。。手伝いながらたまにちょっと胸が苦しくなる。。
それはトウキョウという大きな街にいったときのことでした。ロッポンギというたくさんたくさんヒトがいるところで、こんなカッコウをさせられた。
その夜のことなんだけどね、牡蠣の人のお部屋から街のあかりがとてもとてもキレイだった。たくさんたくさん光ってるんだ。
その先にね、海がみえたんだよ。街のあかりがたくさんたくさん光ってそれはそれはキレイにみえたんだ。少しだけなら。。少しだけならいいよね?
ぼくはね、海をみたらいつでもはいりたくなるんだよ。とてもとてもはいりたくなるんだ。
でもね、牡蠣の人はとてもとてもきびしくて「この海はダメだ!」とかうるせぇんだよ。すごくすごくうるせぇんだよ。
だからたまにしか海にいれてもらえない。しかもわざわざ誰もいない遠い遠い海にいくんだぜ?無人島とかさ、おかしいだろ?
牡蠣の人さえいなけりゃ、いなくなれば、オレは好きなだけ海に入れる!
(あれ。。あれれ。。ぼく。。どうしたんだろ。。)
牡蠣の人の声がきこえる。。コイツさえいなくなれば。。コイツさえ。。
気がついたら、そこには傷だらけの牡蠣の人が横たわっていました。泣いてます。たくさんたくさん泣いてます。その涙の水たまりにぼくはいました。
牡蠣の人はゆっくりと起きあがり僕を抱きしめてくれました。つぶれそうなくらいに。
たくさんたくさん涙がかかってきて、ぼくは少しづつだけどもとに。。
牡蠣の人、ごめんなさい、ごめんなさい。でも牡蠣の人は泣きやみません。「もうもとにはもどれないんだよ。もうどうやってももとにはもどれないんだよ」「もう一緒にいられない」とてもとても小さな声でした。
もうすぐクリスマス。牡蠣の人のクリスマスは、それはそれはとてもとてもたのしいんだ。もう一回でいいからプレゼントを。。わたしたいよぉ。。わたしたいよぉ。。
「ごめんな・・ごめんな・・・いつかすべての海にはいれるようにする・・かならず・・かならず・・」
そうつぶやいたきり牡蠣の人はもうなにもいいませんでした。
2017-05-04
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